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コラム:銀ブラ。BEAMS銀座店とトリコロールで想う、ファッションの意味

日本のメンズドレスファッションの総本山、BEAMS(ビームス)に初めて足を運んだ。
きっかけは、彼らが発行するスタイルブック『MR.BEAMS』だった。
2026年SS版(vol.13)で初めてその存在を知った遅咲きの私だが、最先端のプロたちが紡ぐ美意識とコーディネートの論理は大変参考になった。
秋冬の装いを組み立てる上でも手元に置いておきたい。まだ配布中であれば一冊いただき、あわせて手持ちのストライプシャツに合うネクタイを新調しよう。そう考えて、銀座のど真ん中に位置するBEAMS銀座店へ。

今日の私の装いは、ロロピアーナのネイビースーツに、ARCODIOのサックスブルーストライプシャツ。
少し汗ばむ陽気に合わせてノータイとし、ベルトとシューズはダークブラウンで統一した。
ノータイの胸元には、白のリネンチーフを「クラッシュ」で無造作に挿し、適度な脱力感を演出した。
(昼までデスクワークをこなしていた服装だが、鏡に映る姿は明らかにこれから遊びに行く気満々である)
店舗の3階、ドレスフロアへ。奥へ進むほどに心地よい緊張感とドレス感が高まっていく。
スタッフに希望を伝えると、さすがはBEAMSのプロフェッショナルだった。
私の当日の服装から好みの文脈を瞬時に読み取り、手持ちのワードローブを丁寧にヒアリングした上で、最高の一本を提案してくれた。そのネクタイのディテールについては、別の記事でじっくり紹介したい。
買い物を終えた私は、その足で老舗喫茶「銀座トリコロール 本店」へと向かった。

ちょうど13時を回った頃。ランチ時で周囲のレストランは混雑していたが、デザートと軽食がメインの純喫茶なら空いているだろうという読みは見事に的中した。待ち時間ゼロで、半年前の雨の日に訪れた時と全く同じ席へと案内される。
注文したのは、前回売り切れていた念願の「サヴァラン・オランジュ」だ。
幼い頃、父親が食べていた不二家のサヴァランを一口貰って以来、私はこの洋菓子に目がない。しかし最近では扱う店がめっきり減ってしまった。
トリコロールのそれは、期待を裏切らずたっぷりと洋酒に浸っていた。オレンジの爽やかな香りと洗練されたクリームのコクが口いっぱいに広がり、あっという間に平らげてしまった(あまりの居心地の良さに、追加でサクサクのエクレアまで堪能した)。

かつて親から聞かされてきた「敷居の高い銀座」は、ファッションのカジュアル化や観光客の増加によって、一見すると様変わりしたように思える。しかし、本質は違った。
BEAMSのスタッフはクラシックを現代的に解釈して文化を守り、トリコロールの給仕は今も美しい黒のジレを纏って凛と佇んでいる。
誰かが言っていたが、ファッションとは「自己表現」であり、同時に「相手への敬意」である。
「私はこういう人間です。あなたに敬意を表します」
その美しい境界線を飛び越え、最近は「私がこうなのだから、あなたも受け入れなさい」という、自己表現が行き過ぎた装いや態度の人を、街で見かけることが増えた気がする。
私が40代になってあえてクラシックなスーツスタイルに身を包むのは、決して気障(きざ)に振る舞いたいからではない。
欲しいのは、大人の品格と清潔感。そして、周囲に与えるべき「威厳」と「安心感」だ。
装いという非言語のコミュニケーション。
スマホの短いテキストや動画に脳を焼かれた現代人には、もう読み取れない文脈なのかもしれない。
しかし、だからこそ私は、自らの生き方をあつらえる「Bespoke Life」を続けていきたいと、この銀座の街で静かに思うのだ。
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